はい。この話題何度かお客様ともやり取りしている話題で、どうにもわかりにくいようで、なかなか理解してもらいにくい話題のひとつ。
でも書いたんですが、わかりにくいので、ちょいと視点を変えてまた書いておこうかと。
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NASとは
流行りのNAS。「ねっとわーくあたっちめんとすとれーじ」の略でUSB接続ではなく、ネットワーク(LAN)で接続するストレージ(ドライブ / HDDなど)の事。言い換えればファイルサーバ(専用デバイス)です。因みにこれが同じネットワークでもLANではなくてWAN、つまりInternet経由だとクラウドドライブと言う(厳密には違うけれども)わけですね。
さて、NASには1ドライブと複数ドライブのモデルがありますが、1ドライブはまんまHDDがネットワークで接続されるもの、です。これが基本。2ドライブ以上のものは RAID構成をとることが可能。RAIDは0〜10まで構成方法があって、詳しくはググって調べてもらうとして一般的な2ドライブ構成の場合にはRAID1のミラーリングで使うのが一般的。つまり、2つのHDDを使って全く同じ内容を2つのHDDに記録して、どちらか片方が壊れても残りの片方でデータを維持し、壊れた方を交換することでまた2台で維持を続行することが可能、という仕組っすな。
「だからNASをRAID1で運用すれば常に2台に同じデータを書き込んで、不足の事態に対処するから、バックアップだよね?」
そこが違う。ここがなかなか理解してもらえないポイント。要するに使い方なんだけれど、ね。
1ドライブのNASの場合(1ドライブのファイルサーバの場合)
- NASのスペースをバックアップ先として使った場合には、バックアップ
- NASのスペースをファイルサーバやメディアサーバとして使った場合にはもちろんバックアップではない
これは理解してもらいやすいかと思う。ので説明は省く。が、これがここから先の考え方の基本。
2ドライブ以上のRAID構成のNASの場合(2ドライブ以上のRAID構成のファイルサーバの場合)
- NASのスペースをバックアップ先として使った場合には、バックアップ
- NASのスペースをファイルサーバ・メディアサーバとして使った場合にはバックアップではない。
です。そう、1ドライブ構成の時と考え方は同じってわけです。バックアップ先に指定すればそれはもちろんバックアップ。言い換えればバックアップサーバ。でもそれ以外の、共有ファイル置き場とか、ファイルサーバ、メディアサーバとして使うならそれはバックアップではない、です。ではなんでRAIDなんて導入するか、ですけれどRAID1でいうと
RAID1は冗長性確保のため
これね、この言葉がわかりにくいよね。
耐障害性を高めるために予備システムを準備して、システム全体を二重化することを冗長化と呼んでいます。 冗長化によって、システムの安全性や信頼性を高めた状態を実現できていることを「冗長性がある」と表現します。
RAIDとは何か?知っておきたい基礎知識 – エレコム
読んでも「は?」って人も多いかと。よーするに、絶対止めたくないシステムや障害時・メンテナンス時の復旧時間を極力短くする必要があるようなシステム、と、そのデータのためにある。
例えばだ。動画などのメディアサーバーやチームの共有ドライブなどに2ドライブ構成のNASを導入したとする。この場合、定期的にHDDの状態を監視して異常があればすぐに、もしくは一定時間経過後に予防措置的にHDDを1台ずつ交換し、ずっと安定して使えるシステムを構築する、ということだ。NAS自体が壊れない限りずっと安定して使える、というメリットがある。言い換えれば「信頼性と安定性の確保」だ。だから24h稼働するようなシステムやIPカメラの記録などにも向いている。でもこれは決してRAID自体の機能がバックアップのためにあるのではないのだ。大体、世代管理できないし。
因みに(自分でググれと書いた手前簡単に書くと)他の RAID構成で言うと
- RAID0: ストライピング(高速化の為)、冗長性無し。実際に使える容量=搭載したHDD量(3TB+3TBなら6TB)
- RAID1: 冗長性の為。実際に使える容量=搭載したHDDのどれか少ない方の容量1台分の容量(3TB+3TBなら3TB、3TB+6TBなら3TB)
- RAID5:ストライピング+冗長性の為。3台以上で構成。実際に使える容量=搭載したHDD台数-1台分(3TBを3台なら6TB分、3TBを4台なら9TB分)
- RAID6:ストライピング+冗長性の為。4台以上で構成。実際に使える容量=搭載したHDD台数-2台分
- RAID10:ストライピング+冗長性の為。4台以上で構成。実際に使える容量は半分
とまぁざっとこんな感じで、RAIDの解説するサイトやブログをググって読んでみて貰えばそれぞれの詳しい構成や利点が書かれている。
が!
個人的にはどこもかしこも「理論的には」の話ばかりで「実際の運用で」の話や経験を加味して書かれているところが非常に少ないので、「理論的なこと」が書かれていると前置きして読んでほしい。
で、2023年の現時点で、個人的な考えも加味して書かせて貰えば、よほど特殊な使い方、企業でない限り、RAIDは RAID1一択でいーんじゃねーかと思うのだ。なぜか。
RAID0はどちらかのHDDがダメになれば一発アウトで全データロスト
RAID5,6,10は冗長性はあり、ストライピングによって速度も得られるが、そもそもSSD全盛期のときに速度というならSSD使えば良い話でストライピングのメリットを感じない。且つ冗長性があるといっても実はRAID5,6,10は故障を察知しにくいので、 RAIDケース警告ランプなどでやっと気がついたときには実はもう遅く、とんでもない事態になっていることも(経験あり)。更に怖いのがRAIDコントローラー故障やRAIDケース自体が壊れたら基本アウトって事。そう、壊れるのはなにもHDDだけではないのだ。そこを語らないで記事を書いているところは経験がなく、理論だけで書いているのだろう、多分。。。
そこ行くとRAID1は単純なだけに実際の運用にはメリットがある。1台故障してももう片方が生きているうちに交換すれば良い、緊急でデータが必要だったとしても残った一台で動作するし、RAIDケース自体がこわれたとしても最悪残った1台を引っこ抜いて例えばext4フォーマットならUSB HDDケースに入れてLinuxマシンに繋げりゃ読める。これ、実際になんどか助けられているし、復旧時も極力短い時間で済み大事にならずにほっとしたという経験をなん度もしている。他のRAID0,5,6,10のどれでも出来ない芸当、なので RAID0.5.6.10ではバックアップは超必須なのだが、RAID1の場合は最悪バックアップが無くてもどーにかなる場合も多い。
なので、4台以上構成のNASなんかを大きなデータを大量に扱うわけでもないところにに「いいですよー!これあればバッチリですよ!」なんて意味不明な文句で薦めているのを見かけると、なんだかなぁ、と、思ってしまう。小さいところなら2ドライブのRAID1のNAS+USB HDD(バックアップ用)で十分だし、1ドライブのNASを2つで相互同期、とかubuntuサーバにSSDとHDD組んでsamba領域にはSSDを、バックアップにHDDを、の方が運用がシンプルでずっと楽だし、もっと万全を期して楽をするならRAID1のNASを2セット(相互同期、もしくは片方をバックアップサーバ)の方が遥かに障害耐性は上がると思うのだが。。。
てことで、RAIDの仕組みそのものはバックアップではない、のだ。
バックアップはデータの保全のため
一方、バックアップはタイトルにも書いた通り「データ保全のため」のものだ。例えばNASにはUSBコネクタがあり、説明書にも「定期に的にUSB HDDなどにバックアップを取る事をお勧めします」などと書かれている事と思う。
例えばいろいろ方法はあるがバックアップ方法のひとつは定期的にUSB HDDなどでバックアップを取り、そのHDDは防湿・防埃な冷暗所に保管、だ。場合によっては複数用意したり、保管場所を物理的に変えたりということもする。
例えば、常時接続して適宜差分バックアップを世代と共にバックアップなんてのもある。これは意図せずファイルを消してしまったり、改変してしまったときにいついつの日付時間の状態に戻せる、ということだ。
このように、バックアップはいかにして大事なデータを保管するかということに主眼か置かれる。RAIDの冗長性とは意味合いがまるで違うのだ。
RAID1構成のNASにバックアップした場合だが、先述の複数HDDに保管したのと同じと思ってもいいだろう。ただし、先述の通りRAID0,5,6,10構成のNASにバックアップというのは(個人的に)あまり意味がないこととしてお勧めしない。
TimeMachineにはRAID1がお勧め
例えばMac標準機能のTimeMachineはバップアップアプリとしてちょいと特殊でシステムを含めたMacのすべてのデータを差分バックアップを履歴付きでをとってくれる。そのために常時動いており、いつでも過去の状態に戻れるし、TimeMachineからシステムごと復元もできる。この常に動いているというのがポイントで、Macに限らず常に動くようなバックアップ先にはRAID1の方が信頼性が高くなるってわけだ。もちろん1ドライブでも良いのだが。
ファイルサーバ・メディアサーバに使っているNASには別途バックアップが必要
ここまで書けばやっと理解してもらいやすいかと思うが、RAID構成のNAS自体がバックアップでは無いというのは理解してもらえるかと思う。因みにRAID構成のNASを2つ用意して片方をファイルサーバ、もう片方をバックアップサーバなんてのはかなりいい感じかと思う。まぁでもそこまでしなくても定期的にUSB HDDなどにバックアップするというのが現実的ではあるけれど。なぜなら・・・
NAS(ファイルサーバ)には無停電装置必須
だからだ。猫も杓子もコピペ記事も技術者の記事もなぜ誰も無停電装置について記述していないのか不思議でならない。いくらNASだ、RAIDだといったところで電源が切れて仕舞えば一発アウトだ。上位のNASには停電時に安全に終了処理ができるように無停電装置と連動する仕組みが備わっている。それが安価なNASには無い。ここは実は本気で考えるべきことかと思う。RAID構成のNASの電源をブチっと切ったら本気でやばいって。なのに安易に安価なNASを進めている記事の多いこと。NASを導入するなら【絶対に】無停電装置とセットだ(もちろん無停電装置と連動する仕組みがあること)。
Linuxを使ったファイルサーバならその辺は当然クリアする。無停電装置を買ってセットすればいいし、ノートパソコンにLinuxを入れたのならバッテリーが内蔵されているからその仕組みを利用すればいい。
NASは安い・手軽だ、なんて記事が溢れているが、個人的にはLinuxでファイルサーバを構築した方が(手軽ではないが)下手すりゃ安価に仕上がるし、自由度も高い。まぁ、スキルは必要になるけれど・・・。
てことでまとめると
- RAID構成のNAS自体はバックアップではない、バックアップ先に指定すればバックアップ
- RAID構成のNASには【絶対に】無停電装置が必要で、無停電装置と連動できるNASでなければRAID構成のNASである意味はない。簡易なもの(無停電装置を用意しない)なら1ドライブ構成のNASで十分
- スキルがあるか、スキルを取得する手間を惜しまなければ、Linuxサーバの方が自由度は高い
- 速度や容量を求めなければ今時ならクラウドサーバの方がいい場合の方が多い
- バックアップはバックアップアプリや方法によってRAID1が良いか、都度接続都度保管が良いか変わる
です。はい。 > 某
あ、そうそう、今時なら、NASのEthernetは2.5GbE対応以上のものの方が【絶対に】いいです。USB3.0接続したのと変わらない速度出ます、はい。
NASも進化しているだねー
ふむふむ。話はわかった。で、NASを選ぶとしたら何かおすすめは?と聞かれたら、今ならこれかなー
言わずと知れたM/BメーカーでもありPCメーカーでもあるASUSの系列のASUSTOR。いままでのNASメーカーよりコスパいいし、低価格のものでも2.5GbEなのがいい。もちろん全機種無停電装置対応だ。
特にAS3302TとAS3304Tの2台はかなり面白い。普通にRAID構成にできるのはもちろんだけれど、MyArchiveという機能で、例えば2ドライブのAT3302TであればRAIDにせず、2台のうち一つを取り外し可能ドライブ、それもフォーマットはexFAT/NTFS/HFS+/ext4に対応(更に上位機種のにBtrfsにも対応)。一般的なフォーマットなら取り外してそのまま他のUSB HDDケースに入れて読み出したり、保管したりするというもの。これは他者に大容量のデータを渡すときにも使えるし、(上位機種なら)Btrfsでスナップショット付きでHDDストレージでのバックアップで容量いっぱいになったら交換して保管する、というバックアップ用途でも活躍する。つまりリムーバルHDDがネットワーク対応になったようなもん。2ドライブ構成のシングルモードでも似たようなことは出来そうなもんだが、意外とこれができないのも多い(シングルモードでも取り付けるとフォーマットするしかなく、基本的に取り外しには未対応、とか)。MyArchiveではNASが起動したまま片方のドライブを取っ替え引っ替えできる、他のASUSTORに持って行っても使える、というのがミソ。また、2ドライブモデルではメリットがわかりにくいが4ドライブモデルだと3台でRAID5を組んで1台分をMyArchiveにする、とか2台でRAID1を組んで残り2台をMyArchiveにするとかいうのが可能。これ、かなり便利な機能。
・・・でも、ASUSTORのNAS、まだ実際には試してないんだよねぇ。安価だし、試しに導入してみようかな。。。4ドライブモデルが機能的には最適そーなんだけど(2台でRAID1、残りの2台をMyArchiveにして1つをバックアップ、1つをアーカイブドライブとかできる)、うちの場合2ドライブでRAID1か、RAID1使わずにMyArchiveでも十分便利かな・・・。
因みにうちのubuntu/windowsマシン、最小構成にして言えるとはいえ、デスクトップ本体だけで170w、27inchモニターの28wと他細かいの合わせたら200w。これを常時付けっぱにすることは、特に最近は電気量値上がりもあって躊躇せざるを得なくなってきてたのは確か。それがAS3302Tにすれば電源投入時や安定性のために65W電源なものの、消費電力はスペック表によれば12.3wだ!実に1/16 .2もの省電力化を24h稼働のままで実現できる。しかもWoLでの運用も出来るようで待機時は6wまで下がる。そうか・・・。・・・。
更に因みに、今うちのメインマシンのMac Studioの基本のバックアップはTimeMachiでAkitioのRaid HDDに6TB x2でとっている。他に以前にも書いたが保管データは別にリムーバルにしているHDD2台に退避させて保管。そのRAID HDDケースと6TB HDD. x2をASUSTORの4ドライブモデルAS3304Tに統合してしまった方がいいのではないか? とも、考えた。これはかなり悩んだ。電力的には統合したとのしないのとでは似たもん。見た目は1台になるためスッキリ。統合するメリットとしては意外やここまで。逆に統合するデメリット/統合しないメリットとしてはネットワークパケットがその分流れること、TimeMachieは別に24h稼働でなくてよくMacと共に電源が落ちて良いこと(電源が落ちている間はHDDの安全性もより保たれる)、完全に別のハードウェアなので1台にまとめるより、より障害に耐性があること、追加するNASは別にRAID構成でなくても良いこと。と、よく考えてみりゃ、すでにTime Machine専用USB RAIDがあるなら無理して統合する必要はないことを再確認。逆にUSB RAIDなどがない場合はNAS一台でというのもありだろうけれど、すでにあるので、ね。うちの場合の最優先はMac SdudioのTimeMachineでのバックアップなもんで。その次にWindowsマシンのバックアップと先日導入したMacBook Air 13inch 2015(ubuntu22.04)のバックアップ。共有ドライブ、Google Driveのバックアップ等々、かな。てことで
よし、ものは試しに、だ。ポチッ!(AS3302T)
2 thoughts on “「RAIDはバックアップではないっす。同じ理由でNAS(RAID)もバックアップではないっす」「ほえっ?」–といいつつNASをぽちっ。”